2002.7

「プールサイド」
   
その花の名が「くちなし」だと知ったのは
大人になってからのことでした

目も開けられないほどのカルキのきつい水の中
すべるように泳いでいく
彼女(ともだち)を金網越しに見ていた
かたわらに咲く白い花の甘い香りが
水の匂いと混じりあう初夏の夕暮れ

夕陽に反射してきらきら輝く水の中
何回も往復する彼女を見ていた
25m泳ぐのがやっとの私は
ただひたすら憧れのまなざしで

その花の名が「くちなし」だと知ったのは
大人になってからのことでした

今でもその白い花を見かけるたびに
甘い香りに包まれるたびに
思い出すのは 夕暮れのプールサイドで
彼女を待っていた無邪気な時代

人魚のように水中をゆく
彼女の姿を目で追っていた

今思えば あれは「恋」だったのかもしれません

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