『眼鏡越しの空』C
 「ほぉら、あたしの言った通りだったでしょ?眼鏡とって化粧すれば瑶子さんに負けない、って」
鏡に映るあたしを見て美和子が得意気につぶやく。
「いっぺんやってみたかったのよねぇ、とーこちゃんを変身させるの」
満足気に言うのは麻衣のお姉さんの由衣さん。
  
 あれから半年たった、2月のとある日曜日。
 今日はいよいよお姉ちゃんの結婚式。
 あたしの家でお姉ちゃんの仕度をしたのだけど、担当の美容師さんは麻衣のお母さんと由衣さんにお願いしたら、お姉ちゃんの支度がすんだ後、美和子たちのたくらみ通り、今度はあたしが鏡の前に座らされた、というわけ。  
 自分でもびっくりしていた。あれほど気にしていた目の傷も全然目立たないし、髪型変えて、ちょっと化粧しただけで顔が違ってみえるなんて。
 由衣さんが言う。
「とーこちゃんってば結構綺麗だし、背が高くて、髪だってきれいなロングなのにそれに気づいてないんだもんねー。嫌になるくらい色気がない、って言うかそっけないと言うか・・・ねぇ」 

 「本並先生、おめでとー!」
 教会での式が終わり、外に出るお姉ちゃんと本並先生。待ちかまえたように紙吹雪まきーの、クラッカーならしーのする生徒&招待客の皆様。そんな中、あたしの姿を見つけた美和子達がいっせいにかけよってくる。
「ひょえー、とーこさん化けたわねぇー」
感心したようにつぶやく絵里。わいわい大騒ぎしているところにやってくる新郎新婦。  
「みんな来てくれてありがとうな」
本並先生・・・もとい(今日から)お義兄さんがもうこれ以上はない、ってくらいの笑顔であたしたちに言う。
「休日返上して来たんだからさあ、よろしくね、ハネムーンのお・み・や・げ」
ずうずうしいお願いをする梢を軽くこづきながら、お義兄さんはあたしに一言。
「いい女してるじゃねーか、瞳子」
ちょっと眩しそうな視線であたしを見ている。

 「これからもよろしくな。おまえは今日から俺の大事な妹だから」
 おまえは、俺の大事な妹。その言葉にまだ少しこころが痛むけれど。
 いつかは素直に心から彼のことを「お義兄さん」と呼べる日が来るのだろう。
 いつか、彼以上にあたしの心を占める人が現れれば・・・。

 幸せに向かって歩いていくお姉ちゃんと本並先生。その姿を見ているうちに、不意に涙が一つ、伝って落ちた。 
「瞳子ちゃん・・・大丈夫?」
そばにいた美和子が心配そうにのぞき込む。 
「いやあ、今、目にゴミ入っちゃって・・・コンタクトってこれが嫌なのよねぇ」
あわてて言い訳しながら美和子から目をそらし、頬におちた涙をぬぐって空を見上げた、涙がそれ以上こぼれないように。

 

 レンズ越しに見上げた青空は涙ににじんで、それはまるで天を流れる水のように見えた・・・。

(第3話『眼鏡越しの空』 The end.)

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Intermission B
 3話が終わりました。
 これも初出は所属サークルで発表したもの。
 当初はクールビューティーなイメージで瞳子さんを書いていたのですが、彼女を主人公にしてみたら、瞳子さんがコンプレックスの塊で、それを隠すためにクールさの仮面をかぶっている的な物語になりました(苦笑)

 梢たち6人組の中で、自分に一番近いのは楓、一番遠くて、憧れに近いキャラが瞳子さんなんですね。
自分がそうじゃないもんだから、クールな知的美人って憧れるんです。
(私の表現力じゃそうは見えないかもしれませんが・・・)
なんだろ、姉御的キャラというか。自分じゃなりたくてもなれないからその分小説のキャラに託す、というかね。

 さて、今の段階ではこれだけしか言えない(というかこれしか決まってないんですが)完全書下ろしとなる第7話(6人の現在の実年齢・24歳の物語)は、
もちろん6人ともでてくるんですがメインは瞳子さんになりそうな気配。
なんだかんだ言っても瞳子さんを愛しちゃってるのね、私(笑)

 それでは、次は美和子が主人公の4話です。
 6話共通のエピソード(梢・夏樹の破局)の他、美和子から見た瞳子の物語、そして美和子の恋、さらに「瞳子・美和子・亨の幼なじみの絆ってええなー」的なストーリーとなっております。
 最後までお付き合いくださいませ。


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