09 // 早朝の教室
「あれ、藤崎早いね」
まだ誰もいないと思ったのに、資料室のドアを開けると、すでに先客:藤崎が机に向かっていた。
「ああ、自分ちも教室も雑音が多くてかなわんからな…牧島は?」
「まああたしもそんなもんよ。……あ、市原ももうすぐ来ると思うけど。さっき会った時に藤崎を探してたから」
そんな言葉を交わしながら、あたしは自分の席につく。
特別教室棟の最上階の端、ありとあらゆる書類、資料が所狭しと並ぶ文字通り資料室・のこの部屋。
でも、あたしや藤崎にとっては、格好の書斎代わりといってもいい部屋だった。
学業以外の行事や雑務に奔走する生徒会及び各行事の実行委員会メンバーが、誰にも邪魔されず自分の作業に没頭できる場所として、なおかつ色々な調べ物の為に校内をあちこちしないですむように、本並先生が学校側に許可を取ってここを使えるようにしてくれてから、授業以外の時間の多くをここで過ごすようになった。
特に今の時期は体育祭も終わり、文化祭の企画準備の為に、朝早く登校して、授業前にここにこもることが多くなっていた。
進学校と呼ばれる学校の多くは、文化祭と体育祭を同じ時期に合同でやることが多いらしいけど、そこは文武両道・やるときはやるという校風の城山は、体育祭の一ヵ月後に文化祭・・・と、準備にじっくりと時間を取れるスケジュールになっているからだ。
「やっぱり俺と牧島と手芸部じゃ手薄だよなあ。せっかくこれだけの企画なんだから盛り上げたいんだよなあ。…なんかいい案ない??」
手芸部長の市原愛子が、最後の文化祭に何か記念に残ることがしたい、と藤崎に相談したことから始まった、文化祭でのファッションショー企画。ためしに企画書やら作品やら出させてみたら、これが結構面白くなりそうで。
だけどやるからには徹底してやりたい、せっかく舞台発表を30分確保したのだから…というのが藤崎・市原・あたし3人共通の見解だった。
ただ、思ったとおりやるにはそれだけの人間が必要で、とてもじゃないがあたしたち3人と手芸部員含めても20人足らずじゃどうしようもない。
「各部に協力頼めないかなあ?たとえば舞台照明とか美術方面は演劇部と美術部と写真部に、音響は放送部に、BGMの選曲は絵里とか富田に頼めば軽音とブラバンが…って感じでさ。ヘアメイクは藤崎がやればいいじゃん。モデルは校内から募るしかないだろうけど。あとは手芸部がどれだけ『作品』を出せるかによるよね。」
ふんふんとうなずきつつ、あたしの話を聞いたりメモったりしている藤崎。でも、その目線はあたしでなく、窓の外に注がれてる。その目線がどこに向いてるのかなんとなくわかっているので、さらにこんな提案も付け加えてみた。
「ヘアメイクもひとりでやりきれないってんなら、麻衣にでも頼めばいいじゃない。あの子の腕前とか素質は、藤崎の方がよく知ってるでしょ?」
それを聞いた瞬間、藤崎の表情は満面の笑みに変わる。
「あ、それは俺も思ったんだよね。谷村なら家からいろいろ道具借りてこれるだろうし」
…もっともらしいことを言ってるけど、本当は『麻衣と一緒に何かできること』自体が嬉しいんだろうに…って突っ込むのもバカらしくなるくらい、麻衣のことになると藤崎の態度は本当にわかりやすい。
藤崎がこの資料室に入り浸る理由。
本当なら会長権限で生徒会室を私物化することだってできるのに、あえてこの辺鄙な場所を好む理由。
藤崎のデスクからは、うちのクラス・・・3年B組の教室が良く見える。
今だって、藤崎の目線の先には梢たちと一緒にいる麻衣の姿がある。
目の悪いあたしだってその姿がはっきりわかるぐらいだから、きっと藤崎はこの部屋から、教室の麻衣の姿を目で追っているのだろう。
強力なリーダーシップとカリスマ性を発揮するこの男前の秀才も、色恋沙汰になるとそれが影を潜めてしまうようだ。
まるで小学生が好きな女の子に意地悪するみたいな、そう言う麻衣への態度を見てたらおかしくておかしくて仕方ない。こんな姿、きっとここで一緒に仕事しているあたししか知らないんだろうなあ。
「おっはよう!」
勢いよくドアを開けて入ってきたのは市原。
その瞬間、藤崎の今までにやけていた顔が、あっという間に「公」の顔に戻った。
その切り替わりの激しさ、本人はおそらく気づいてないんだろうけど、目の前でそう言うことをされちゃ、こっちだって毎回毎回、笑いをこらえるのに必死だ。
「ん?俺の顔になんかついてるか??牧島」
「何でもないわよ、会長サン??」
まだ誰もいないと思ったのに、資料室のドアを開けると、すでに先客:藤崎が机に向かっていた。
「ああ、自分ちも教室も雑音が多くてかなわんからな…牧島は?」
「まああたしもそんなもんよ。……あ、市原ももうすぐ来ると思うけど。さっき会った時に藤崎を探してたから」
そんな言葉を交わしながら、あたしは自分の席につく。
特別教室棟の最上階の端、ありとあらゆる書類、資料が所狭しと並ぶ文字通り資料室・のこの部屋。
でも、あたしや藤崎にとっては、格好の書斎代わりといってもいい部屋だった。
学業以外の行事や雑務に奔走する生徒会及び各行事の実行委員会メンバーが、誰にも邪魔されず自分の作業に没頭できる場所として、なおかつ色々な調べ物の為に校内をあちこちしないですむように、本並先生が学校側に許可を取ってここを使えるようにしてくれてから、授業以外の時間の多くをここで過ごすようになった。
特に今の時期は体育祭も終わり、文化祭の企画準備の為に、朝早く登校して、授業前にここにこもることが多くなっていた。
進学校と呼ばれる学校の多くは、文化祭と体育祭を同じ時期に合同でやることが多いらしいけど、そこは文武両道・やるときはやるという校風の城山は、体育祭の一ヵ月後に文化祭・・・と、準備にじっくりと時間を取れるスケジュールになっているからだ。
「やっぱり俺と牧島と手芸部じゃ手薄だよなあ。せっかくこれだけの企画なんだから盛り上げたいんだよなあ。…なんかいい案ない??」
手芸部長の市原愛子が、最後の文化祭に何か記念に残ることがしたい、と藤崎に相談したことから始まった、文化祭でのファッションショー企画。ためしに企画書やら作品やら出させてみたら、これが結構面白くなりそうで。
だけどやるからには徹底してやりたい、せっかく舞台発表を30分確保したのだから…というのが藤崎・市原・あたし3人共通の見解だった。
ただ、思ったとおりやるにはそれだけの人間が必要で、とてもじゃないがあたしたち3人と手芸部員含めても20人足らずじゃどうしようもない。
「各部に協力頼めないかなあ?たとえば舞台照明とか美術方面は演劇部と美術部と写真部に、音響は放送部に、BGMの選曲は絵里とか富田に頼めば軽音とブラバンが…って感じでさ。ヘアメイクは藤崎がやればいいじゃん。モデルは校内から募るしかないだろうけど。あとは手芸部がどれだけ『作品』を出せるかによるよね。」
ふんふんとうなずきつつ、あたしの話を聞いたりメモったりしている藤崎。でも、その目線はあたしでなく、窓の外に注がれてる。その目線がどこに向いてるのかなんとなくわかっているので、さらにこんな提案も付け加えてみた。
「ヘアメイクもひとりでやりきれないってんなら、麻衣にでも頼めばいいじゃない。あの子の腕前とか素質は、藤崎の方がよく知ってるでしょ?」
それを聞いた瞬間、藤崎の表情は満面の笑みに変わる。
「あ、それは俺も思ったんだよね。谷村なら家からいろいろ道具借りてこれるだろうし」
…もっともらしいことを言ってるけど、本当は『麻衣と一緒に何かできること』自体が嬉しいんだろうに…って突っ込むのもバカらしくなるくらい、麻衣のことになると藤崎の態度は本当にわかりやすい。
藤崎がこの資料室に入り浸る理由。
本当なら会長権限で生徒会室を私物化することだってできるのに、あえてこの辺鄙な場所を好む理由。
藤崎のデスクからは、うちのクラス・・・3年B組の教室が良く見える。
今だって、藤崎の目線の先には梢たちと一緒にいる麻衣の姿がある。
目の悪いあたしだってその姿がはっきりわかるぐらいだから、きっと藤崎はこの部屋から、教室の麻衣の姿を目で追っているのだろう。
強力なリーダーシップとカリスマ性を発揮するこの男前の秀才も、色恋沙汰になるとそれが影を潜めてしまうようだ。
まるで小学生が好きな女の子に意地悪するみたいな、そう言う麻衣への態度を見てたらおかしくておかしくて仕方ない。こんな姿、きっとここで一緒に仕事しているあたししか知らないんだろうなあ。
「おっはよう!」
勢いよくドアを開けて入ってきたのは市原。
その瞬間、藤崎の今までにやけていた顔が、あっという間に「公」の顔に戻った。
その切り替わりの激しさ、本人はおそらく気づいてないんだろうけど、目の前でそう言うことをされちゃ、こっちだって毎回毎回、笑いをこらえるのに必死だ。
「ん?俺の顔になんかついてるか??牧島」
「何でもないわよ、会長サン??」
★文化祭ファッションショー企画の裏側、といった所でしょうか。
瞳子しか知らない藤崎の一面。
彼女は早い段階から藤崎⇒麻衣への思いを知ってたからこそ、「Teenage−」で
麻衣の気持ちに対してもナイスアシストしてたんだよ、というのを言いたかったんです(笑)。