04 // 片想い×片想い

 瞳子ちゃんは、本並先生に片想い。
 亨は、瞳子ちゃんにずっと片想い。
 あたしは、そんな亨にずっとずっと片想い。
 そんなあたしを『無理かもしれない』と思いつつ、ずっと見守ってくれていた尚登くん。

 今となればすごいなあと思えるけれど、あたしたちはずっと『誰かが誰かに片想い』と言う鎖で繋がってたんだ。
 瞳子ちゃんは本並先生に。
 亨は瞳子ちゃんに。
 あたしは亨に。
 尚登くんはあたしに。


 ずっと亨があきらめ切れなくて苦しんだけど、今は尚登くんだけしか見えてない。
 「俺は、永井が好きな美和子ごと、好きになってしまったんだから」
付き合い始めた頃、そう言って、本当ならこんなあやふやな状態のあたしを見限ってもおかしくないのに、ずっとずっと待っていてくれた尚登くん。

 「でもさ」
今となってはいえるけど、と尚登くんが切り出した。

 卒業式を終えた数日後、東京へ旅立つ瞳子ちゃんと亨を見送った帰り道。
 行きはあんなににぎやかだったのに、あたしと尚登くんの会話だけではなんとなく寂しさがぬぐえない。
「永井がいなくなって、俺は実はほっとしてる部分もある」
ハンドルを握りながらぽつりと尚登くんが言った。
「やっと、永井の影におびえないでいいのかなあって」
そのことばに、どきっとした。
 
 ・・・あんなかっこいいこといったけど、永井がいつか美和子の方に向いたら。
 そして美和子が、まだ永井の事をあきらめきれてなかったら。
 美和子が、今は俺だけ、って言ってくれてても、どこかで不安だったんだ。
 それだけ、美和子と永井と牧島のつながりって、俺が割って入れないほど強いものだったから。
 
 とつとつと語る尚登くんの言葉が、胸に突き刺さる。
 彼はあたしを広い心で見守ってくれてた。それに甘えきっていたあたしの態度が彼を不安にさせてたんだ。
 「あのね、信じてもらえないかもしれないけど、今は本当に尚登くんだけなの。亨とは別の感情で、本当に本当に大切なの。今、瞳子ちゃんたちが旅立ってしまって・・・もしも尚登くんまで離れていったら・・・あたしどうしていいかわからないから・・・だから、出来るだけあたしのそばにいてね?」

 大切な人が旅立ち、そして、改めてその人たち以上に大切な人の存在に気付けた今日。
 瞳子ちゃんと亨の二人と、尚登くん。どちらが大切かなんて順番はつけるのはおかしいけれど、でも、隣で見守ってくれるこのひとがいれば、あたしはきっと笑顔でいられるんだろう。
 
 片想い同士繋がっていた鎖が今ぷつりと切れ、その代わりにびくともしない強い強い絆と言う名の鎖が、今あたしたちの間に生まれてきたような気がしていた。
        
             ☆瞳子と亨をお見送りしたその後、の美和子と桑原ですな。
             このあと、 「空港あたりのあやしい建物」で「変なこと」をした(By本編亨発言より)かどうかは、
             皆様のご想像にお任せします(笑)。